第78回 平成22年8月
松井 国央
八月を括る結び目のない日暮
 
豊川 たかを
放課後の椅子に夕日が来て坐る
 
宮川 欣子
八月十五日バンドエイドが剥がれそう
 
島崎 菊子
白玉の浮きくるまでの思案
 
栗原 睦子
菜箸の長さ違へて茄子を焼く
 
桜井 万希子
誘拐は夏手袋の単独犯
 
金谷 サダ子
八月を剥がして遺書になる鱗
 
山県 總子
八月十五日買って冷やせし朝の水
 
森 由紀子
伏線の回収できずに星流る
 
西島 信子
向日葵の迷路より戻らぬ子あり
 
西村 啓夫
追憶の重なり合ひて竹落葉
 
山本 和子
夏雲は亀山社中の上にあり
 
山崎 理子
読経に青条揚羽遊びけり
 
立野 悦子
曼荼羅の皿に浮かびし冷奴
 
鷲田 環
過去形で話しませんか花ダチュラ
 
加藤 直子
そうめんに呑み込まれたる子らの声
 
国藤 習水
暮れ泥む八月の海サザレイシ
 
金澤 直子
鬼やんま睨みつけてる大雪山
 
西島 晃彦
秋の蝉肩にとまりて息ひそむ
 
藤原 優
竿灯や腰のひねりにあやつられ