第77回 平成22年7月
松井 国央
どの波も海月無傷でやり過す
豊川 たかを
前の世で会った気のする蟇
後藤 宣代
朝顔の発心という蔓の先
栗原 睦子
夕顔や男を喫水線に待つ
森 由紀子
団十郎と云ふ朝顔の多面体
吉田 慶子
下塗りを間違えた熱帯夜
桜井 万希子
少女は鉛筆尖らす梅雨の朝
山本 敏倖
朝顔の一鉢院を出てゆけり
豊田 瑞穂
ハニホヘトイロハの記憶雲の峰
島崎 菊子
朝顔の筋をとおしている素顔
金澤 直子
朝顔のひだに折り込む夢の色
国藤 習水
静かなる待合室の青葡萄
鷲田 環
朝顔市なんでも妥協する夫婦
峯田 國江
八月は近ずき千羽鶴足りず
山県 總子
肩凝りを肩でほぐせる梅雨の月
西村 啓夫
糸とんぼベンチに寅の旅鞄
山本 和子
「朝顔の家」と呼ばれるその日まで
照田 宥子
朝顔や黄泉より星を持ち来しか
金谷 サダ子
団十郎の眼の反りや朝顔市
宮川 欣子
天敵を素手でたたいてパリー祭
山崎 理子
夏来たり総て弱りぬ耳鼻咽喉
藤原 優
冷奴こまった時の助け舟
立野 悦子
祭り声墓で休みて大空へ
西島 信子
朝顔の蔓にまかれて市の人
西島 晃彦
江の電の走る軒先蝉しぐれ