第74回 平成22年4月
松井 国央
惜春の形に省略されし土偶
宮川 欣子
震度零漢二人の花筵
豊川 たかを
麦踏んでそのまま地平を消えてゆく
桜井 万希子
気を付けの指が反ってる一年生
山県 總子
夏目家の墓標横書き花は葉に
赤木 京子
かごめかごめ春夕暮が回りだす
栗原 睦子
折鶴を啼かせて飛ばす春の雪
森 由紀子
沈丁花恋はナノレベルで始む
西島 信子
心だけ乗せて下され花筏
金谷 サダ子
地面が好きタンポポ湧くや翔ぶために
藤原 優
春炬燵携帯電話の座もありし
立野 悦子
ベランダにはこべ敷きつめ山を呼ぶ
村本 延子
またひとつ老の決断風光る
山崎 理子
蜂蜜にのんびりせよは難しい
西村 啓夫
憂国の夏眼の動かざる阿弥陀佛
加藤 絵里子
聖堂の輪郭際立つ桜闇
金澤 直子
バスを待つ花咲爺の髪にチョン
山本 和子
母あらば今宵のあたりは花の宴