第71回 平成22年1月
松井 国央
ポラリスがはっきり見えるだけ寒い
 
山本 和子
大根に国のゆくえを聞いてみる
 
加藤 絵里子
円卓の木目に逆らう葱一本
 
山県 總子
裸木を叩くぐらいの悪さして
 
後藤 宣代
陽を容れて枯野に動きなかりけり
 
吉田 慶子
あの人の方を見ている福だるま
 
金谷 サダ子
冬満月近いものから消えてゆく
 
豊川 たかを
新年の欠片集めて老いにけり
 
桜井 万希子
私の足に冬日が延びる呉れてやる
 
島崎 菊子
冬の草裏も表も真っ正直
 
森 由紀子
手足無き土偶の祈り春を待つ
 
峯田 國江
人日やいつもの顔で鳩時計
 
藤原 優
咳ひとつ電車の座席ひとつ空く
 
近藤 斗升
成人日の女いずれも背の高き
 
栗原 睦子
冬夕焼情念が邪魔電柱も
 
加藤 直子
亡き父の顔して叱る冬の海
 
宮川 欣子
注連飾り地球もひとつ年を取る
 
鷲田 環
男子らは袴めしませ野水仙
 
小宮 英代
寒に入る今朝はロイヤルミルクティ
 
山崎 理子
煩悩を叩き壊すか除夜の鐘
 
金澤 直子
雲切れてスポットライト白梅に
 
立野 悦子
冬ウサギ返り血浴びてキツネ追う
 
西村 啓夫
紫雲吐く窓に寒風戻り来ぬ
 
伊藤 季実
家雀鉄砲坂の日向かな